
ヨガをしているとき、「吸うの?吐く?どっち?」と迷ったことはありませんか?呼吸を無理に合わせようとして、息がつらくなったり、ポーズに集中できなくなることもあると思います。
呼吸が乱れるのは初心者だからではありません。筆者の私も含めて、誰でも乱れることはあります。そんなときに役立つ呼吸の対処方法をまとめました。
呼吸の練習はマットの上だけでなく日常生活でも実践できます。ヨガを深めたい人は、少しずつ取り入れてみてくださいね。
- ヨガのポーズ中に呼吸が止まりやすい理由
- ポーズ中も呼吸が続く3つのコツ
- 呼吸が浅くなる理由
- 呼吸しやすい体を作る準備運動

呼吸と体の動きを合わせることで、体の使いかたが明確になる
ヨガの呼吸は、単に空気の出し入れを行うだけではありません。それは、体を動かすリズムを作り出すものです。呼吸が乱れると、どこに力が入っているか、どこを緩めるかがわかりにくくなります。
呼吸をポーズに合わせることで、
- 筋肉の収縮・弛緩のタイミング
- 押す・強くする・引く・伸ばすところ
が明確になり、ポーズの効果を高めることにつながります。
体を動かすことで、自然と呼吸量が増えるしくみが働く
ポーズで筋肉を強く伸ばしたり、足腰に力を入れるとき、体はエネルギーを作るために多くの酸素を必要とします。このとき、交感神経が働き、心拍数も上がり、「もっと酸素を取り込もう」という指令が出ます。
体の要求に反して呼吸が止まってしまうと、
- 筋肉のこわばり
- 息苦しさ
- ポーズがつらくなる
といった反応が起こりやすくなります。
そのためレッスン中は、インストラクターが「吸って!」「吐いて!」と声をかけ、意識的に呼吸をすることを促しているのです。
呼吸は体のサインにもなる
呼吸が乱れるのは、体のどこかが頑張りすぎているサインです。反対に、呼吸がスムーズに出来ているときは、体をうまく使えている状態です。
呼吸がつらいときこそ、一旦息を吐いて、体の動かしかたを見直すきっかけにしてみましょう。
ヨガには呼吸法(呼吸を深める練習)があります。ヨガは呼吸を重視していて、体と心にいい影響があると説いています。詳しく知りたい人はこちらをご覧ください。
呼吸法を習得したら、是非ポーズをとりながら練習してくださいね。
ヨガのポーズ中に呼吸が止まってしまうのは、誰にでも起こりえることです。例えば、動画やレッスンのタイミングに合わせようとして苦しくなることもあります。
そんなときは、次の3つのポイントを意識してください。慣れると自然と呼吸が乱れにくくなります。
ヨガは、体の動かしかたによって、「吸う」「吐く」がある程度決まっています。呼吸のリズムが乱れてしまったときは、体の動きに合わせて呼吸をリセットしましょう。
呼吸と体の動きが連動するとパフォーマンスの向上にもつながります。
吸うときの体の動き

- 手や足を上げる
- 背筋を上に伸ばす
- 上体を持ち上げる、体を反らせる
- 力を入れるとき (体を引き上げる動作)
また、後屈や逆転、あおむけのポーズのあとに上体を起こすときは、息をゆっくり吸いながら、背骨を積み上げるようにしましょう。ふらつきを防ぎやすくなります。
吐くときの体の動き

- 前屈する、上体を下ろす
- 手や足を下ろす
- 上体をねじる
- 力を抜くとき(脱力)
ただしフローヨガなど、手足を下ろすときなどに「吸いましょう」と言われる場面もあります。そのときは、指示に従って、呼吸を続けてください。呼吸を止めないことが最優先です。

呼吸がうまくできないときは、まず吐くことを意識しましょう。息を吐くと体は自然と息を取り込むよう機能します。反対に、吸うことだけを意識すると、息をとめてしまったり、吐くことを忘れてしまうことが多い傾向です。呼吸が止まりやすい場面はいくつかあります。
- ポーズを維持しているとき
- バランスを取っているとき
- 前屈や体を反らしているとき
- ポーズがつらく感じているとき
こういう場面で息が止まってしまったら、息を吐いてから呼吸を再開するのがポイントです。

もう一つは、腹式呼吸、胸式呼吸、ウジャイ呼吸などの呼吸法を意識しすぎて、かえって呼吸がしづらくさせていること。つらく感じるときは、無理してする必要はありません。まずは、
いつもより長めに呼吸をする
鼻から吸って、口から吐く呼吸
など、できるところから始めてみましょう。
呼吸が邪魔してポーズに集中できないときは、呼吸法にこだわらずに普段の呼吸でかまいません。呼吸を途切れさせないことを優先させてください。息をとめると血圧が上昇し、脳や体に負担をかけることがあります。
ただし、口呼吸は外気の菌やウイルス、温度や湿度などをそのまま体内にとり入れてしまいます。口を小さく開ける、普段から鼻で吸う練習をするなど、ご自身の体をいたわるように、無理のない呼吸をしてくださいね。鼻に疾患がある人は、医療機関にご相談ください。
深く呼吸をしようとしても、呼吸で使う筋肉や横隔膜が硬くなっていると、息を吸うときに肺の広がりを十分に引き出せなくなります。
呼吸に関わるおもな筋肉群は、体幹の安定と呼吸の調節を担うユニットとして連動しています。
- 横隔膜
みぞうち付近にあるドーム状の筋肉。息を吸うときに大きく働く - 肋間筋(ろっかんきん)
ろっ骨の間にある筋肉。呼吸にあわせて、ろっ骨を動かす - 腹横筋・内腹斜筋
インナーマッスル。息を吐くときに収縮して腹圧を高める - 骨盤底筋群
骨盤の最下部にあるハンモック状の筋肉。横隔膜の動きに合わせて収縮、弛緩する
この4つの筋肉は、お腹と胸の内圧(腹腔内圧)を調整するユニットとして働いています。どれかひとつでも硬くなったり、動きが鈍いと、横隔膜の上下運動が制限され、自然と呼吸が浅くなります。
とくに、デスクワークによる猫背姿勢で胸がつぶれると、このユニットがうまく機能しません。
呼吸が浅くなる状態は、この筋肉群が十分に動いていないサインです。その結果、肩と鎖骨だけを動かして呼吸をするくせがついてしまいます。
本来は、横隔膜が上下に動き、肺にたくさん空気を吸い込み吐き出しています。横隔膜をあまり動かさずに呼吸をしていると、呼吸筋群が強張り、動きが低下しているかもしれません。
ヨガの練習に入る前に、呼吸筋の連動を促す準備運動をして、横隔膜を動かしやすい状態を作りましょう。

- キャットアンドカウ (背中+肋骨の動きを促す)
- 体側を伸ばすポーズ (わき腹の強張りを緩める)
- 半分の魚王のポーズ(わき腹の筋肉、背中の筋肉を動かす)
また、どのポーズも椅子に座っておこなえる簡単な運動です。デスクワークの合間にして、気分をリフレッシュしてくださいね。
ヨガのポーズは、呼吸と動きを合わせることで安定し心地よく続けられます。呼吸が止まるのは、体のどこかが頑張りすぎているサイン。そんなときこそ一度息を吐いて、力の入りどころや姿勢を見直してみてください。
呼吸筋や横隔膜が動きやすい状態をつくると、自然と呼吸が入りやすくなり、ポーズ中の呼吸も乱れにくくなります。
まずは、深く呼吸しようと頑張りすぎず、呼吸を止めないことが大切です。呼吸が続くだけで、ポーズの取りやすさは大きく変わります。
日常生活でもふとした瞬間に、「今、息がどう入っているかな」と、自分の呼吸に気づく習慣をつくってみてください。ヨガは体を整えるだけでなく、心を整えるきっかけにもなっていきます。


