
ヨガの基本動作の一つ、上体を左右にねじること。ねじりのポーズをしているのに、肩や腰が痛く、ただ呼吸が苦しいと感じたことはありませんか。筆者も最初は、呼吸が苦しくて、力ばかり入ってしまっていました。
ヨガは、上体をねじる動作をよくおこないます。また、この動きは背骨や腰のコリをほぐしたり、腸の蠕動運動を促す効果があるともいわれています。ただ、うまくできていないと、これらの効果も実感しにくいかもしれません。また、肩や腰、胸を痛める原因にもなりかねます。
ここでは、ねじりの感覚をつかむための基本や、よくある勘違い、深め方のコツをわかりやすく解説します。
背中も、肩や腰と同じように凝りやすいところ。そして、背骨は体の中心軸。しっかりケアしてくださいね。
現代の生活は、電化製品の進化や生活の利便性により、私たちは上体をねじる動作をあまりしなくなりました。
その結果、背中や腰の筋肉が強張り、コリが起こりやすい状況を作っています。姿勢にも悪影響を及ぼしかねません。
ヨガで行う上体のねじりには、以下のような効果があるといわれています。
- 背中のコリの改善と姿勢の改善
- 消化器系(胃や腸)の調子を改善
- ポーズの向上につながる
それぞれの効果について、これから詳しく解説します。ねじるポーズの見方が変わるかもしれません。

上体をねじることは、背中(脊柱)や周辺の筋肉を左右に回してストレッチする動きです。それにより、背中の筋肉(多裂筋や脊柱起立筋などの深層筋)、体側の筋肉(腹斜筋群)、首の筋肉(胸鎖乳突筋)の強張りを和らげ、脊柱の可動域が改善します。次のような効果があるといわれています。
- 背中の筋肉の強張りを解消
- 脊柱の可動域を広げる
- 背中全体の柔軟性向上
- 姿勢の改善
また、背中のコリは自覚しにくいところです。デスクワークやスマートフォンの使用は、長時間にわたり筋肉を緊張させ、背中を強張らせる原因を作ります。すこしでも不快を感じたら、ねじりのポーズをしてこの強張りを和らげましょう。
続けることで、背中全体の柔軟性が高まり、姿勢の改善につながると言われています。姿勢の悪さからくる腰痛の予防にも、ねじりのポーズは効果的です。

ねじる動きは腹部を締め付けて圧力をかけます。消化器系の内臓に穏やかな刺激を与え、以下の効果もあると言われています。
- 内臓への刺激による消化機能向上
- 蠕動(ぜんどう)運動の活発化
- 便秘解消に役立つ
デスクワークなど、長時間椅子に座ることは腸を硬くさせ、胃や腸の蠕動運動が低下すると言われています。日常生活で座ることが多い人は、ねじるポーズで胃腸の蠕動運動を促してくださいね。
ただし、食後すぐにヨガをすることは厳禁です。胃に余計な負担をかけ気分が優れなくなることもあります。食後1時間半以上経ってからおこなってくださいね。

ねじりのポーズを行ったあと、もとのポーズに戻ると、「なんだか動きやすくなった」と、感じたことはありませんか。
これは、ポーズの難易度を一度上げることで、筋肉の強張りがさらにほどけ、もとのポーズが取りやすくなるためと考えられています。
たとえば、椅子のポーズの場合。ねじったポーズをしてから、通常のポーズに戻ると、脚の踏み込みや上体の姿勢がしやすくなることがあります。
ねじりというバリエーションを加えることで、筋肉の余分な緊張がほぐれるからです。そのため、ポーズを深める手段として活用できます。
ポーズが取りにくいときや、思うように動けないときは、ねじりなどの「変化」を試してみるのもひとつの方法です。
ねじるポーズによるむくみ解消や内臓の活性化は、残念ながら限定的です。内臓の血流改善効果も同様です。
ヨガによるデトックスは、太陽礼拝など複数のポーズを連続してとることで体を温めて、体全体の血行や巡りをよくすること。個々のポーズによる直接的な効果は証明されていません。「これをすれば大丈夫!」のような、過度な期待は避けましょう。
また、体幹強化やウエストシェイプの効果も限られており、筋肉を緩めて活性化させる程度です。筋力アップやウエストの引き締め効果は、プランクポーズやチャトランガダンダーサナ(四肢のポーズ)など、体幹を鍛えるポーズや筋トレ、ピラティスなども取り入れることをおすすめします。そして、自律神経が整う効果については呼吸によるものです。ヨガはポーズと併せて呼吸を促します。呼吸で横隔膜を動かすため、横隔膜による自律神経を整える効果が高いと考えられています。
なお、ねじりのポーズをすると自律神経が整う、副交感神経が優位になる効果は、医学的、脳科学的なエビデンスはありません。心理学や社会学などの観点から、自律神経を整える効果があると言われています。
ねじりのポーズは、上体をただねじるだけではありません。少し背中の軸がずれていたり、力の入れ方を間違えたりすると、ねじる効果が半減します。無理すると、かえって腰や肩を痛めてしまうこともあります。
自宅で動画や画像を見ながら練習していると、無意識のうちに以下のような状態でしていませんか。
- 背中が丸まっている(猫背)、反っている(反り腰)
- 片方のお尻・座骨が床から浮いている
- 肩が上がり、力んでいる
- 片側だけで頑張ってねじっている
これらは、ねじりの効果を半減させます。安全に、そして気持ちよくねじるには、以下の5つのポイントを確認してみましょう。

①ねじる順番(下から上に向かってねじる)
ウエスト→胸→肩、胸→首の順に徐々にねじること。竜巻のように下から上に向かってねじるイメージでしましょう。
②左右両側を使ってねじる
片側だけと動かそうとしないこと。回転ドアのように両側を使います。ねじる側は後ろへ引くように、反対側は前に押されるように体を動かします。
片側だけですると、肩や胸に負担がかかるので気をつけましょう。
③中心軸(背骨)はうごかさない
猫背や反り腰に気をつけて、背筋は常に上へ引き上げましょう。ねじりが加わっても、背骨を丸めたり、反らしたり、前後左右に傾かないよう常に注意します。
反り腰気味なときは、ろっ骨、胸を突き出してねじっています。気をつけてください。
④骨盤を安定させる
ねじりにつられて骨盤も動くとポーズが安定しません。座位のポーズでするとき、頑張り過ぎるとお尻や座骨が床から離れます。
ただし、がっちり骨盤を固定しすぎると、骨盤の関節、仙腸関節に痛みが生じる場合があります。実際、骨盤は若干動きますが、これは仙腸関節が動きやすくするために起こる現象です。座骨やお尻が浮かない程度で骨盤を安定させましょう。
⑤呼吸を意識する
ねじりのポーズがうまくできないときは、呼吸に合わせて動かすのがポイントです。息を吸う時は背中を持ち上げ、吐くときにねじる。呼吸にしたがってゆっくりとねじりを深めます。
これらのポイントを意識しながらおこなうと、より効果的にねじりのポーズができると思います。
リラックス系ヨガでよくする安楽座のねじりのポーズ(パリブルッタ スカーサナ)を例に、実際の手順を見ていきましょう。椅子に座りながらでもできるポーズです。

あぐらになり、両手はひざの上、もしくは、体の横につける
胸と顔は正面を向き、頭が肩より前に出ないように気をつける
頭を後ろに引いて、耳が肩の位置にくるようにする
ねじる側の手は斜め後ろに、反対側の手はねじる側のヒザの上に置いてから、
ねじる側だけでなく、反対側も後ろから押されるようにねじる
胸が縮こまっていたら、軽く引き上げて胸と顔を正面に向ける。
ろっ骨の突き出し、背筋の反りや丸まり具合を確認する。(反り腰、猫背に気をつける)

ねじる側の胸は後ろへ引くように、反対側は後ろから押されるように動かす
肩が上がっていたら、肩は力が入らないように脱力する
同時に、無理に片側だけでねじっていないか確認する
ねじる側は後ろへ引くように。反対側は後ろから押されるように肩を動かす

中心軸がぶれていないか、顔が正面を向いているか確認する
頭全体が肩より前にこないように、あごや頭を後ろに引き耳が肩の位置にくるようにする
顔は下や上に向かずに正面のままにする
ねじり切ったら、この体勢で呼吸を続けてポーズをキープ
息を吐きながら、ゆっくりとねじれをほどいて正面を向きましょう。
軸がぶれずにウエストからねじると、まっすぐな一本線の軸を感じ、雑巾をしぼるような感覚が生まれます。ねじりかたを覚えたら、今後は1呼吸でねじるようにしてくださいね。
ねじりの基本的な動きとポイントを理解できたら、実際のポーズで活用してみましょう。動画やヨガのレッスンでよく登場する、代表的なねじりのポーズをまとめました。
ねじりのポーズは、おもにあおむけや座位でするものと、立位でするものがあります。ポーズによって安定性やねじりやすさが異なるため、無理のない角度で練習しましょう。

ポーズ名 | 効果 | ポイント |
パりブルッタ スカーサナ (安楽座のねじりのポーズ) | 背中、腰のコリを 緩和 便秘の改善 | 初心者向けのポーズ この記事で解説しているとおりにしましょう |
アルダ マッチェンドラーサナ (半分の魚王のポーズ) | 背中、腰のコリを 緩和 便秘の改善 | ひざを立てた足は足裏、膝を曲げた足は足先の側面で 床を押すとポーズが安定する 胸は持ち上げ、体側は長く保ったままポーズをとる お尻が浮いたり、両座骨が床につかないときは、 浮いた部分にブランケットなどを敷く ひざを曲げずにおこなってもOK |
ジャタラ パリヴァルタナーサナ (ワニのポーズ) | 背中、腰のコリを緩和 お尻と太ももの 強張りをほどく | 両手、両肩はしっかり床につける のばしている側の肩が浮かないようにする 曲げたひざが床につかないときは、 折りたたんだブランケットなどを敷くと楽になる |
パリブルッタバラーサナ (針の糸通しのポーズ) | 肩、肩甲骨、体側の コリをほぐす | 体重が片側に偏らないように両ひざと両足に体重を均等にのせる 下の手を前にだし、肩、肩甲骨の間を伸ばす 床についている肩が痛いときは、タオルを敷いて痛みを和らげる わきや肩の側面を伸ばしたいときは、上の手は頭上の先へ下ろす 肩の前側を伸ばしたいときは、 ひじを曲げて手を後ろに回し手の甲を背中につける |

ポーズ名 | 効果 | ポイント |
パリブルッタ ウトゥカタナーサナ (ねじった椅子のポーズ) | 背中、体幹、太ももを 強くする | ひざが足より前に来ないように、お尻を後ろへ大きく突き出す (ひざに重心が乗らないようにする) ひざは内側にはいらないように、太ももを強くして、 足先とヒザは正面に向ける(足幅は腰幅程度) 下腹部に力をいれて、上体を安定させる ひざとひじの押し合う力の反動を使わずに、ウエストからねじる |
パリブルッタ パールシュヴァコーナ (ハイランジのねじり) | 体幹、足腰の強化 股関節の柔軟性アップ バランスの向上 | 下腹部に力をいれて、上体を安定させる 後足のかかと後ろに押し出して、ひざを伸ばす (伸ばしすぎに注意) 両足の太ももの内側を寄せ合うように強くすると ポーズが安定する 両手を押し合いながら、上体を引き上げてねじる |
パリブルッタ トリコナーサナ (ねじった三角のポーズ) | 体幹、足腰を強くする 股関節の柔軟性アップ バランスの向上 | ウエストをねじりながら上体をたおす 両太ももの内側を寄せ合うように強くするとポーズが安定する ひざを伸ばしすぎないように気をつける(1ミリ緩める程度) 手をつく位置は上体のたおす角度に合わせる (太もも→すね→足首→床の順) ヨガブロックをおいてするときは、 前足の内側(ふくらはぎの横)におく |


ねじる動作は、背中や腰のコリをほぐし、姿勢改善にも役立つ反面、姿勢や体調に応じた注意が必要です。背筋を伸ばし、体の中心軸が前後左右に傾かないように意識しましょう。
特に立位のポーズでは骨盤が安定しにくく、無理をするとバランスを崩す原因にもなります。
また、ねじりには背骨の可動域の限界があり、どんなに柔軟でも背中が真後ろを向くほどねじれません。呼吸が通る範囲でねじる感覚を大切にしましょう。
腰痛や脊柱の疾患、消化器系の不調、妊娠中などの方は、負担がかかる可能性があります。体調に不安がある方は、あらかじめ医療機関にご相談ください。
ヨガでは、完成形にとらわれず、今の自分の体に合わせて調整することも重要です。ねじりのポーズも心地よく呼吸できる範囲で練習してくださいね。
