
ヨガの呼吸法、「ちゃんとやろう」とするほど苦しくなったことないですか?
深く吸おうとしたら肩に力が入った。お腹に息が入る感覚がわからない。腹式呼吸で慣れてきたのに、「次は胸を横に広げて深い呼吸をしましょう」と言われて、え?となった。
普段する呼吸は無意識にできるのに、ヨガの呼吸になると頑張りすぎてしまうのは、やり方が間違っているのではなく、意識の置き方かもしれません。コツをつかめば、続けていくうちに自然とできるようになります。
ここでは、呼吸が苦しくなる理由と、まず試してほしい基本の呼吸、そして慣れてきたときの使い分け方を順番に整理しています。
- ヨガの呼吸法が苦しく感じる理由
- 呼吸法を無理なく続けるコツ
- 初心者におすすめの腹式呼吸
- レッスンでよく使われる5つの呼吸法
- 呼吸法の選び方と使い分け
ポーズ中の呼吸については、こちらで解説しています。参考にしてくださいね。
呼吸法をやろうとするほど苦しくなるのには、理由があります。以下のようなことが考えられます。

頑張るほど、力が入ってしまう
「深く吸おう」「ちゃんとやろう」と意識した瞬間、肩やおなかに力が入っていませんか?
呼吸に集中しすぎると、体は緊張モードに入ることがあります。呼吸は本来、力を抜いているときほど深くなるもの。頑張るほど逆効果になりやすいのが、呼吸法の難しいところです。
おなかや胸を使う感覚がわからない
「おなかをふくらませる」と言われても、その感覚がそもそもわからない、という人は少なくありません。日常の呼吸は無意識にしているため、意識的にお腹や胸を動かして呼吸するという感覚に慣れていないのは当然です。感覚がつかめないのは、上手、下手ではなく、慣れない動きをしているからです。
腹式呼吸に慣れたころに、別の呼吸法が登場する
やっと腹式呼吸になれたところで、別のレッスンに参加すると、「胸を横に広げる胸式呼吸で」と言われ、戸惑うことは少なくないかと思います。腹式呼吸を長くしている人ほど、切り替えに時間がかかることもあります。
呼吸法が苦しくなるのは、最初から正しくやろうとしているからかもしれません。
最初は「深く」より「止めない」、「正しく」より「楽に」が優先です。呼吸の長さ、深さに囚われずに、腹式呼吸の動きを覚えることを優先してください。体を使って呼吸する感覚を作ることが、すべての呼吸法の土台になります。
呼吸法の練習は、腹式呼吸からがおすすめです。「息を吸う・吐く」を意識しすぎず、おなかをふくらます・へこます動きに集中できるので、自然と深い呼吸ができるようになります。
まずは自分のペースでゆっくり息に合わせておなかを動かすところからはじめてください。

【特徴】
おなかを動かしながらする呼吸法です。
吸うときにおなかをふくらませ、吐くときにおなかをへこませます。
横隔膜が上下に大きく動くため、深くゆったりした呼吸になります。
【効果】
副交感神経が優位になり、心身が落ち着く
体の緊張をゆるめる
お腹の動きで内臓がマッサージされ、便秘改善に役立つ
【おすすめのタイミング】
夜・寝る前・不安感が強いとき・心を落ち着かせたいときに
ポーズを長くキープするレッスンや陰ヨガ、
動きがゆったりしたリラックス系のヨガレッスンに
※リラックス効果が強いため、お休み前やレッスン後がおすすめです。
腹式呼吸の感覚がつかめてきたら、少しずつ他の呼吸法にも挑戦してみましょう。レッスンでよく登場する呼吸法は、腹式呼吸を含めて5つあります。
それぞれレッスンや目的に合わせて使い分けることができます。いくつかできるようになると、より練習に集中しやすくなります。
レッスンの内容によっては、腹式呼吸だとしづらいときがあります。慣れてきたら、目的やレッスンに合わせて呼吸法を選んでみましょう。以下の表を参考にしてください。
腹式呼吸以外に、4つの呼吸法(胸式呼吸・完全呼吸・ウジャイ呼吸・片鼻呼吸)がおもに使われています。
| 目的 | おすすめの呼吸法 |
| 落ち着きたい・リラックスしたい | 腹式呼吸・完全呼吸 |
| 集中したい・目を覚ましたい | 胸式呼吸 |
| 気持ちをリセットしたい | 片鼻呼吸 |
| 太陽礼拝など動きが多いレッスン | 胸式呼吸・ウジャイ呼吸 |
| ポーズに集中したい | ウジャイ呼吸 |
| 瞑想前に呼吸を整える | 完全呼吸・片鼻呼吸 |
上表はほんの一例です。いくつかできるようになったら、まずはレッスンに取り入れてください。自分に合うを呼吸法を見つけると、ヨガの上達につながります。

【特徴】
ろっ骨を横に広げるように吸い、ろっ骨まわりをしぼめるように吐く呼吸法です。
おなかはあまり動かさず、胸まわりの呼吸筋を使います。
【効果】
交感神経が働き、集中力が高まる
下腹部に力を入れやすくなり、ポーズの安定につながる
体内エネルギーの活性化
【おすすめのタイミング】
朝・日中・集中したいときなど
パワーヨガやフローヨガなど動きが多いレッスンに
【注意点】
肩がすくみやすいので、肩は上がらないようにリラックス(脱力)させましょう。
ろっ骨が前に出てきやすいので、肺を横に広げるイメージを持ちながら呼吸します。

【特徴】
ヨギックブリージングと呼ばれ、胸式呼吸と腹式呼吸を合わせた呼吸法です。
吸うときは「おなか→胸→鎖骨(首・肩)」の順でふくらませ、
吐くときは「鎖骨(首・肩)→胸→おなか」の順にしぼませます。
上半身全体を使った最も深い呼吸法です。
【効果】
全身に酸素が行き渡りやすくなる
深い集中状態に入りやすい
心を落ち着かせる効果がある
【おすすめのタイミング】
ウォームアップや瞑想をする前に
ポーズを長くキープする陰ヨガ、リラックス系ヨガなど
【注意点】
一度に動かさず、息を吸う時は下から上へ、息を吐くときは上から下へと、
波のようなイメージを浮かべながら、上体を動かして呼吸を深めましょう。

【特徴】
胸式呼吸をベースに、喉の奥の気道を狭めて、
鼻から抜ける空気に摩擦音を立てながらおこないます。
鼻から息を吐くときは、シューといった「波」の音を立てるイメージでしましょう。
【効果】
集中力が高まり、雑念を入りにくくする
ポーズと呼吸をリンクさせやすくする
【おすすめのタイミング】
アシュタンガヨガやアイアンガーヨガの実践やヨガに集中したいとき
(太陽礼拝やフローヨガにもおすすめ)
【注意点】
音が出にくいときは、目と耳を軽くふさいで呼気の音に集中してみましょう。
※この呼吸法は、浄化法に使われるウジャイ呼吸とは異なります。

【特徴】
左右の鼻を交互に使い、吸う・止める・吐くを繰り返す呼吸法です。
プラーナ(気)の流れを整える「浄化の呼吸」とされています。
初めてするときは、息をとめずに「片鼻で吸う→同じ片鼻から吐く」だけでOKです。
慣れてきたら、本来の左右切り替える手順でしましょう。
【効果】
気持ちがリセットされ、頭がスッキリする
(2~3分、丁寧にするだけで、頭がクリアになる感覚が生まれます)
片寄った気の流れ(プラーナ)を整える
鼻腔の通りが良くなる
プラーナの流れを整える
【おすすめのタイミング】
瞑想前・仕事の切り替え・リフレッシュしたいときに
【注意点】
鼻づまりがあるときは、塞ぐほうの片鼻を少し開けてしても構いません。
呼吸が苦しくなったら、手を離して普通の呼吸に戻し、深呼吸して整えましょう。
鼻に疾患がある人や、鼻炎の薬を服用している人は、症状が改善されてから実践してみてください。
それぞれの呼吸法には効果的なシーンがありますが、どの呼吸法でも共通して得られるものがあります。呼吸を意識的に深めることで、体と心にこのような変化があらわれます。

呼吸が浅いと横隔膜がしっかり動かず、体に十分な酸素が届きません。その結果、疲れやすくなり、病気に対する抵抗力が落ちるなどといった症状が出やすくなります。**
ヨガの呼吸法では、この横隔膜や呼吸で使う筋肉(呼吸筋)を大きく動かすため、心肺機能が高まり、以下の効果があらわれると言われています。
- 疲れにくくなる
- 有酸素運動の効果が出やすくなる
- 姿勢が安定する(姿勢を安定するインナーマッスルの強化)
また、腹式呼吸は、腹圧を変化させて呼吸をするため内臓をマッサージします。胃腸の活性化、便秘の改善にも役立ちます。
呼吸をすると、横隔膜やおなか周りの筋肉が動きます。この動きが胸腔と腹腔の圧力を変化させ、ポンプのように血液が心臓に戻るのを助けています。この一連の動きが、心と体のバランスを保つ自律神経にも良い影響を与えます。**
- 吸う息:体が活動モードに入り、交感神経が働きやすい
- 吐く息:心が落ち着くモードに入り、副交感神経が働きやすい
とくに「4秒で吸う → 8秒で吐く」といった、吐く息が長いヨガの呼吸は、心拍数を落ち着かせ、心の緊張をほどく効果があります。
緊張・不安・焦りを感じるときは、まず吐く息をゆっくり長くしてみましょう。
ヨガの呼吸は外部の酸素を取り入れるだけでなく、生命エネルギーの源を「プラーナ(気)」を取り込むと言われています。このプラーナの流れは、自律神経と同じく、性質の異なる2種類のエネルギーのバランスで成り立っています。
- ピンガラー:活発で活動的なエネルギー(交感神経的な働き)
- イダー:静かで穏やかなエネルギー(副交感神経的な働き)
そして、この2つが交差するところ、体の中心にはスシュムナーと呼ばれる経路が流れています。
ただ、このプラーナは、ストレスや心の緊張で流れが滞りやすい性質ももっています。この滞りがバランスを崩し、どちらかに偏ると、心と体に不調があらわれます。
- ビンガラーが強すぎると…… → イライラする、気が立つ、怒りっぽくなる
- イダーが強すぎると…… → 疲労感や倦怠感が続く、消化不良を起こしやすい
ヨガの呼吸法はこの不調を整えて、プラーナ(気)の流れを良くします。ヨガのレッスン後に感じるスッキリ感は、プラーナが整った証しかもしれませんね。

呼吸法で困ったことを質問形式でまとめました。参考にしてください。
浅い呼吸は胸やお腹がうまく使えていないサインです。まずは、呼吸に合わせて、胸とおなかが動いているかを意識してみてください。
初めのうちは、呼吸のペースよりも、呼吸で胸やおなかを動かすイメージを植え付けましょう。できるようになってから、呼吸のペースをつかんでいくと楽になります。
胸やおなかが硬いと感じたら、上体を反らしたり、丸めたりする「キャットアンドカウ」、座って体側をのばすポーズなど、呼吸で使う筋肉の強張りをほどくポーズがおすすめです。
めまいや苦しさは無理にしているサインです。少しでも苦しいと感じたら、ゆっくりと普段の呼吸に戻してください。はじめから長い時間する必要はありません。1~2分でも十分です。
まずは呼吸に合わせて、おなかや胸を動かすことに慣れていきましょう。
また、練習中に息をとめてしまうこともよくあります。そんなときは、頭の中でリズムをカウントしながら、「吸って~、吐いて~」と、つぶやくように呼吸するのもおすすめです。
朝は交感神経を優位にしやすい胸式呼吸、夜は副交感神経を働かせる腹式呼吸が良いとされています。また、胸式呼吸は体内エネルギーを活発させ、腹式呼吸は体内エネルギーを沈ませる効果があるとも言われています。
とはいえ、朝に腹式呼吸をしてはダメ、夜に胸式呼吸をしてはダメといった決まりはありません。慣れないうちは、呼吸しやすいほうを選ぶのがベストです。
はい。1日1分でつづけたほうが呼吸のペース、深さも変わってきます。
朝の通勤時に胸式呼吸、寝る前や夜のリラックス時に腹式呼吸など、すき間時間にすることもおすすめです。
口呼吸から卒業したい人にも、30秒~1分間の呼吸練習は効果的です。
呼吸はいつも無意識にしていますが、ほんの少し意識を向けるだけで、体のこわばりや心のざわつきが落ち着いていきます。
ストレスを強く感じたとき、焦りや不安があるときは、まず“息の状態”を観察してみてください。ゆっくり吐く息を長くするだけでも、心にスペースが生まれます。
ヨガの呼吸法は、特別な準備も器具も必要ありません。思い出したときに、1分だけでも大丈夫です。
無理のない範囲で、心地よい呼吸を続けてみてくださいね。呼吸が変わると、日常のちょっとした心のゆらぎに対しても、落ち着きが増えてきます。
今日の呼吸が、明日のあなたの過ごし方をやさしく変えてくれますように。
<参考文献>
**National Center for Biotechnology Information(NCBI)”Physiology, Respiration” (StatPearls)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK482456/
**National Center for Biotechnology Information(NCBI)”Physiology, Breathing Regulation” (StatPearls)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK470538/
(※呼吸に伴う横隔膜の運動や、呼吸リズムが生理学的に調整されている仕組みに関する基礎的な理解の参考として参照)
※練習の際は無理をせず、痛みや強い違和感がある場合は中止し、医療機関や有資格者にご相談ください。
※持病のある方、妊娠中の方、怪我の治療中の方は、事前に医師へご相談ください。
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