
体側を伸ばしているはずなのに全然伸びている気がしないと感じたことはないですか。筆者も始めたころは、インストラクターさんに「体側全体を伸ばしましょう」と言われ、これでいいのかな?と思っていました。
実は、この伸びている感じがしないのには理由があります。それは、姿勢のクセや上体をたおす角度・方向性が関係しているのです。ここでは、体側が伸びない原因と、気持ちよく伸びるためのコツを解説します。
スマホやデスクワークで硬くなったわき腹や背中をほぐして、スッキリしてみませんか。
- 体側の効果が半減するしがちなこと
- 気持ちよく伸ばす3つのコツ
- 体側を伸ばす理由とその効果
言われたとおりにしているのに、あまりポーズの良さが感じられない。そう感じたら、姿勢や上体をたおす方向が少しずれていることが多いです。
体側のストレッチは、側面にある筋肉(腹斜筋、腰方形筋など)や背中の筋肉(脊柱起立筋、広背筋など)を伸ばします。ただし、ほんの少し姿勢が崩れるとこれらの筋肉が十分に働かなくなります。
以下の状態でしていると、体側が伸びづらくなります。

- 背筋が丸い、または反っている
- 上体たおすときに前のめりになってしまう
- たおす方向が、真横ではなく、斜め前や後ろにずれている
正しく上体を伸ばしているか確認するには
自分の姿勢がどうなっているかを確かめるには、壁を使う方法がおすすめです。壁から10センチ程度離れて、座って体側を伸ばすポーズをします。このときの状態を冷静に確認しましょう。

- 猫背な状態でしている → 座った時点で背中が壁にぶつかる
- 前のめりでしている → 手を後ろに引いても壁につかない
- 体が反れている → 座っているときに腰に手をおき、腰の筋肉が緊張している。
もしくはみぞうちを突き出している
ポイントは、壁に沿うように真横に上体をたおしてくださいね。
体側をしっかり伸ばすには、上体を大きくたおすよりも、姿勢や体のたおす向きを整えることが大切です。この3つのコツを意識するだけで、十分に伸びている感覚が味わえます。

体側をのばすには、背筋をまっすぐに保つことが大切です。背中を丸めてしまうと、体側の筋肉が十分に伸びません。上体をたおす前に、背中を上に伸びるように姿勢を整えましょう。背骨と背骨の間をのばすようなイメージをもつとしやすくなります。
座ってするときは、腹筋を軽く使って骨盤を起こします。顔や目線を正面に向かせて胸も持ち上げます。
反り腰の人は、骨盤を立たすとき無意識に反らせ、みぞうちも一緒に突き出しがちです。みぞうちは軽く引き締めて、腰をそりすぎないように気をつけてください。
胸を正面に向けると、縮こまっているろっ骨やわき腹の筋肉が広がり、呼吸もしやすくなります。
体側の筋肉をストレッチするには、腰骨(骨盤のでっぱり部分)から上体をたおすと、わき腹までしっかり伸ばします。上体の傾きが浅く、胸の位置で伸びが止まっている人をたまに見かけます。ウエストに伸びが感じられるところまで傾けてください。
また、上体を傾きすぎてお尻や座骨が浮いてしまう人も多いです。これは筋肉の伸びを弱めます。左右の座骨やお尻は床についていることを意識しながら伸ばしましょう。
体側を伸ばすとき、手も一緒に上げてポーズを取ります。上げた手を斜め上に伸ばすと、体側全体の伸びが深まります。このとき、肩をすくめず、わきをしっかり伸ばすようにしてください。ろっ骨の脇の筋肉(前鋸筋)や背中の筋肉(広背筋)をストレッチします。
たおす角度は腰骨(骨盤の上辺のところ)から伸びる感じがするところまで。体のラインが緩やかな弓なりになっている状態でキープします。無理に傾けず、心地よくのびていることを心がけてくださいね。
また、体側や腕がしっかりと伸びを感じていれば、腕が耳より少し離れていても問題ありません。

以前レッスンをしていた時にいただいた質問をいくつか紹介します。参考にしてくださいね。
壁を使ってポーズをとると、自分のたおしかたのクセがわかります。壁から10センチ程度離れて、座って体側を伸ばすポーズや三角のポーズをします。
猫背な状態でしていると壁にぶつかり、前のめりでしていると手を後ろに引いても壁につきません。ポイントは、壁に沿うように真横に上体をたおしてくださいね。
手の位置は、上体が前に倒れないように補助ができる、お尻の横から少し離れたところにおきましょう。お尻より前や後ろにつくと、たおす方向がずれることがあります。真横に身体をたおしたときに、手の位置が邪魔に感じたら、少し前にずらして調整しましょう。
また、上体は手で支えず、倒している側の体側や背中の筋肉を使って上体を支えます。手の力は補助的な役割としてとらえましょう。
上体を傾ける角度は、ウエストやわき腹が伸びているところまでが目安です。上体の傾く角度は40度ぐらいが限界です。それ以上傾けるとお尻やひざがういてきます。角度よりも、気持ちよく伸びている感覚を大切にしてください。
座って行うと、骨盤が安定するため体側を意識しやすく、初心者に向いています。ただし、股関節が硬いと背中が丸まりやすいので、クッションやブロックを敷いて骨盤を立てましょう。
立って行うポーズは、下半身の安定力とバランス力を同時に使います。全身を使うので、体側を伸ばすこと以外にも、他の部位も気に掛けることが増えます。単に体側だけを伸ばしたいときは、座ってすることがおすすめです。
レッスンや動画でする代表的な体側を伸ばすポーズを紹介します。ポーズの効果とポイントをまとめています。どのポーズでも姿勢を整えて、腰骨からたおすことが大切です。

| ポーズ名 | 効果 | 注意点 |
| ウティッタ トリコナーサナ (三角のポーズ) | 腰や体幹を強化 足や股関節の柔軟性も高める | 上体を横にたおすとき、股関節から上体をたおし、体をまっすぐに保つ。 軽く上体をひねる 前に傾かないように、顔や胸を正面にむけ、背骨を丸めないようにする 無理せず、体側が伸びることを優先 (注) 三角のポーズはポーズの取り方に複数あり、股関節を曲げてする方法もある。その場合、太ももの裏側とお尻の柔軟性が必要。 |
| ウティッタ パールシュヴァ コーナ―サナ(体側を伸ばすポーズ) | 足腰を鍛えて体幹を強化 股関節の柔軟性も高める | 前足のひざは足首より前にこないようにする(足首とひざは一直線上) 前足の太ももにおく手で上体を支えない。体幹でしっかり上体を支える 上体を軽くひねって、上体を伸ばすと体側が伸びやすくなる |
| 立位の三日月のポーズ (ウティッタ ハスターサナのバリエーション) | 背中やわき腹を広げ、呼吸を深める。 | 両足でしっかり踏み込み、体を安定させる 伸ばす側の骨盤を軽く横に突き出してポーズをとる |
| パリガーサナ (かんぬきのポーズ) | 太ももと呼吸筋、体側の柔軟性を高める | 下の手を滑らせながら、上体を真横にたおす 傾け過ぎずに、心地よく伸びるところでキープ 顔を上に向けるときは首を軽く回して、天井を見るようにする (首が痛いときは、正面を向けたままでOK) |

| ポーズ名 | 効果 | 注意点 |
| 座って体側を伸ばすポーズ (スカアーサナのバリエーション) | 腰やわき腹のこわばりをほぐす | 両座骨を床につけ、お尻が浮かないようにする 顔や胸を正面に向け、背筋を伸ばしながら真横にたおす 伸びが足りないときは、手を斜め上に伸ばす |
| バナナのポーズ (バナナサナ・陰ヨガ) | 体側の左右の筋力バランスを整え、深いリラックスを促す | 両足を横にずらす位置は30cm~40cm程度 伸ばしている側の骨盤が浮かないようにする 両側の肩甲骨を床に押す 体側は緩やかなカーブを保ち、深い呼吸で2,3分キープ |
| 片足を伸ばしてねじるポーズ (パリブルッタ ジャーヌ シルシャアーサナ) | 太ももの裏側やお尻、 体側の柔軟性を高める | 骨盤を立てて、股関節から上体をたおす 太ももの裏側に負荷がかかるので、体側の傾ける角度は無理にしない 手を床につく位置は手の付きやすいところで。体側より遠くにおかないようにする 上体をねじるときは軽くする程度で十分。体側がしっかり伸びていればOKです |
体側を伸ばす動きは、強張った背中や体幹の側面をストレッチすることで、呼吸や姿勢を整いやすくする効果が期待できます。

体側を伸ばす動きは、呼吸を助ける筋肉の強張りを和らげる効果があります。特に、肋間筋・腹斜筋群・横隔膜など呼吸筋は、呼吸のたびに胸郭(胸椎、ろっ骨、胸骨で囲まれた籠状の骨格構造)を広げる働きを担っています。
デスクワークや猫背姿勢が続くと、ろっ骨まわりの筋肉が硬くなりやすく、肩や鎖骨まわりだけを動かして呼吸をしがちです。肋間筋などの筋肉を十分に使えないと呼吸筋が硬くなり、肺の動きに制限をかけてしまいます。
厚生労働省の「e-ヘルスネット」の「呼吸筋の柔軟性」によると、呼吸筋の柔軟性が低下すると胸郭の動きが制限され、深呼吸がしづらくなるとされています。
日頃から呼吸が浅いと感じている人は、体側を伸ばすポーズをしながらゆっくり深呼吸しましょう。横隔膜も大きく動かして、呼吸筋をじんわり伸ばしてください。
さらに、目線を上に向ける、(上げた手を見る)といった動きは、胸鎖乳突筋や斜角筋などの首まわりの呼吸筋にもアプローチするためにしています。

体側を伸ばす動作は背中の筋肉(脊柱起立筋)や、腰の筋肉(腰方形筋)にもアプローチします。
脊柱起立筋は、首から骨盤にかけて小さな筋肉が連なり、背骨を支えている筋肉群です。姿勢を真っすぐに保つ働きがあり、長時間同じ姿勢でいると強張りやすい特徴があります。
一方、腰方形筋はろっ骨と骨盤をつなぐ筋肉で、骨盤や腰椎を正しい位置に保ち、安定させる重要な枠割りを担っています。
ただし、以下のような体の使いかたや生活習慣があると、この筋肉が緊張し、コリや不調の原因につながります。そして、筋力のバランスが崩れることで、骨盤のズレや腰痛を悪化させる原因にもなりかねません。
- いつも同じ姿勢を長時間している
- 重い荷物を持つ
- 姿勢が悪い(猫背、反り腰)
- いつも同じ足を組んで座る
- 同じ肩だけにカバンをかけている
こうした習慣によって生じた筋肉の左右差や硬さを、体側を伸ばす動きがやわらげてくれます。腰骨からわき、背中にかけて広く意識を向けて、呼吸とともに心地よく伸びる感覚を味わってくださいね。
日本理学療法士協会の資料でも、腰方形筋や脊柱起立筋の柔軟性を高めることが、姿勢の改善や腰痛予防につながると報告されています。
繰り返しですが、体側を伸ばすときは、以下のポイントが大切です。
- 背中は丸くならないように気をつける
- 上体は真横にたおす
- お尻が浮かないところで上体を傾ける
デスクワークや長時間の同じ姿勢で固まった体を放置せず、気持ちよく体側を伸ばしましょう。ねじるポーズと組み合わせることで、さらに効果を高められます。
体側を意識的に伸ばすことは、腰や背中のこりの解消に役立つだけでなく、呼吸を深くし、気持ちもリセットします。少しの意識で体は確実に変わりますよ。ぜひ毎日の生活に取り入れてみてくださいね。

