
ヨガの後屈のポーズをするとき、腰を痛めた経験はありませんか?筆者もレッスン締めくくりのお休みのポーズで、腰に違和感を覚え、腰ばかり使っていたと気づいたことがあります。
その原因は、腰に頼った反り方をしているのかもしれません。本来の後屈は、胸を開いて、背中を頭の方に伸ばすように反らし、腹圧で腰を守ります。そして、体の前面に伸びる感覚が生まれるのが、正しい反り方のサインです。
ここでは、腰の負担を減らす後屈のポイントを図解やイラストでわかりやすく紹介します。胸を開いた、安全で気持ちのいい後屈を習得してくださいね。
- 腰を守る正しい後屈のしかた
- 初心者でもできる段階的な練習ステップ
- 後屈の注意点とよくある質問
後屈がつらい、腰が痛いと感じる原因は、体の反りかたや力の入れ具合にあります。多くの人に共通するのは次の3つ。一つでも当てはまると、腰への負担が大きくなります。気をつけてくださいね。

原因1・腰だけで反っている
背中や胸を使わず、腰椎(ようつい)だけで反ってしまうと、腰まわりに過剰な負担がかかります。腰を反らす意識ではなく、胸を開く(前に出す・引き上げる)ことが大切です。肩を後ろに引いて肩甲骨を寄せると、自然に胸が開きやすくなります。まずは、胸の開きかたを意識しましょう。
原因2・おなかの力(腹圧)が抜けている
上体を反らすときにお腹を緩めてしまうと、背中の反りやすい部分、腰椎(ようつい)で反るようになります。その動きを阻止するために、下腹部に力を入れて腹圧で腰をコントロールしましょう。後屈をしているときは、おなかは常に力を保ち続けることが重要です。
原因3・ 太もものの付け根を押し出していない
橋のポーズやラクダのポーズなどで、太ももの前側(太ももの付け根)を前(または上)に押し出す動きは、上体を後方に傾け、後屈を深めやすくするために不可欠です。太ももの前側を押し出さないと上体は傾けにくく、結果として腰だけで無理に反ってしまいます。太ももの付け根を前に押し出す意識で、腰の負担を減らしましょう。
腰に負担がかかる原因は、腰だけでなく、胸・お尻・おなか・太ももの誤った使いかたにあります。これらを正しく使うことが重要です。

胸を開く(肩甲骨をよせる)
後屈は、胸椎(背中の胸あたりの脊柱部分)を軽く前に出してポーズをとります。肩を後ろに引いて肩甲骨を寄せると、胸の中央が自然と前にでて左右に広がります。この動きは肩の負担を減らし、腰の過度な反りを防ぎます。**
感覚がつかみにくい場合は、下の図解を見ながら鏡の前で胸を開く動きを確認してみましょう。

- 背中を長く保ち、両手を前に出す
- ひじを曲げてわきを締める
- 両手を体側の位置ぐらいまで横に広げる(無理にひろげなくてもOK)
難易度が易しいポーズ、キャットアンドカウやコブラのポーズだとあまり感じませんが、ラクダのポーズや弓のポーズなど、強度を感じるポーズでは、腰を痛める結果につながります。
背中を反らすのではなく、長く伸ばすイメージで
背中は反らす意識よりも、背中の筋肉を長く引き伸ばしながら上体を持ち上げます。脊柱と脊柱の間を広げるイメージで伸ばす意識は、背中を過度に反らさず、腰を使うくせを矯正するのに役立ちます。
腹圧をコントロールする
もう一つ大切なのが、腹圧をかけて腰椎を安定させることです。上体を起こすときや持ち上げるときに、下腹部に力を入れて腹圧を高めます。後屈は、腹筋と背筋のペアで働かせることが、安全にポーズを深めるポイントになります。**
太ももを前に押し出す
橋のポーズやラクダのポーズなどの後屈では、太ももの前側を押し出すように意識しましょう。太ももの付け根が伸びて上体が少し傾き、後屈がしやすくなります。骨盤を前(上)に出す動きによって、下腹部の筋肉が作用し、腹圧を強くします。
腰を痛めない後屈は、「伸びる・広がる」意識が大切です。胸・背中・おなか・太ももを連動させて、無理のない後屈が自然にできるようになりましょう。**
後屈は、段階を踏んで一つずつ習得することが近道です。腰に極端な負担をかけずに、少しずつ後屈の感覚を覚えるステップをご紹介します。イラストを見ながら練習の参考にしてくださいね。
まずは、魚のポーズで胸を開く感覚をつかみます。肩甲骨を寄せて胸を持ち上げる動きから始めましょう。魚のポーズは、腰への負担は少なく、背中や肩まわりを柔らかくする効果があります。
ただし、首に負担がかかるため、首や頸椎に疾患がある人は、無理におこなわず、②の橋のポーズから練習しましょう。

- あおむけになり、両手を体側の横におく、両足はそろえる
- 手のひらを下にして、両手をお尻の下にしまい込む(肩は脱力する)
- 息を吸いながら、肩甲骨を寄せて、両腕は床を押し、腹筋を使って胸を持ち上げる
- 息を吸いながら、腹筋や両腕の力を使って、頭と上体を持ち上げる
- 息をはきながら、ゆっくりと、おなか→胸→肩→頭の順に下げる
- 最後に両手を外に出す
ポイント
*首は縮こまりすぎに注意。頭はうごかさない
*ポーズをキープしているときは、肺の上部に空気をたくさん取り込むように、
ゆっくり深呼吸。(強張りがちな胸郭を内側からストレッチする)
*腰ではなく、胸の広がりを意識する
橋のポーズは、肩と足が床についておこなうので、安定しやすく、負荷もかかりにくいです。太ももの裏側、お尻の筋肉を使って、骨盤を押し出す感覚を覚えましょう。肩甲骨を寄せて胸を開く練習にもなります。

- あおむけになり両ひざを曲げる。足先と両ひざの幅は骨盤と同じにする
お尻とかかとはすこし離す - 息を吸いながら、腹筋を使って上体を押し上げる
お尻、太ももを使って、さらに下腹部や太ももの付け根を押し上げる - 両手は床をしっかりと捉えるか、余裕があれば、肩甲骨を寄せて、両手をお尻の下で組む
- 吸う息のタイミングで、両手をほどき、手のひらを床にしておく
- 吐く息にあわせて、ゆっくりとお尻→おなか→胸→肩の順に下ろす
- 立てている両ひざをのばし、大の字になる
ポイント
※両ひざが外に開かないように、太ももの内側を強くして、
ひざと足先の向きを前にしたまま、真っすぐに保つ
※ひざを前に出し、かかとを引き寄せるように力を入れると、足が固定しやすくなる
※吸う息で骨盤を上に持ち上げ、吐く息で足裏と腕で床を押してポーズを安定させる
※ポーズを保っているときは、吸う息で胸を内側から広げ、
吐く息で脱力してポーズが崩れないように気をつける
コブラのポーズは、うつぶせの姿勢から上体を起こす動きに合わせて、腹圧をかけながら背中を使う練習に向いています。背筋は反らすよりも、頭の方向に伸ばす意識をもちましょう。無理に腕で押し上げず、背中と腹圧で支えることが大切です。

- うつぶせになり、わきとひじを締めて肩を引き、両手は胸の横、両足の甲を床につく
- 息を吸うタイミングで、足の甲と下腹部を床に押し付けて、上体を起こす
- 吐く息で肩甲骨を下げて、肩の力を抜く
- 体側は長く保ち(背中を長く伸ばすイメージ)、肩を後ろに引いて、胸を開く
- 吐く息にあわせて、上体を下ろす
- 吸う息にあわせて、お尻をかかとにのせる
- 子どものポーズで少しお休みする
ポイント
※吸う息で上体を持ち上げ、吐く息で下腹部を締めて、腰を守るようにする
※肩は胸より前にならないように、肩を後ろに引いたまま上体を起こすと
ポーズがとりやすくなる(うつぶせのときに、少し肩甲骨を寄せて胸をひろげておく)
※キープ中の呼吸は、腹圧を意識しながら、一定のリズムで呼吸を続ける
弓のポーズは足を持ち上げながら背中を反らせるため、足の力と背筋の連動を感じやすいポーズです。また、両手でそれぞれの足先をつかむので、強制的に肩を後ろへ引き、肩甲骨を寄せます。腹圧をしっかり意識して腰を守りましょう。

- うつぶせになり、両足は骨盤よりすこし狭い幅(坐骨幅)か骨盤と同じ幅に開く
- 息を吐きながら呼吸をと整え、両手で外側から両足の甲をつかむ
息を吸いながら、下腹部に力を入れて床を押しつつ、両足を後ろに蹴りだす - 足に引っ張られるように、上体を持ち上げる
- 下腹部に力を入れつつ、更に足の甲で後ろに押す。目線は正面を向く
- 吐く息にあわせて、足をつかんでいる両手をほどき、床につき、
両足をゆっくりおろす - 吸う息で、上体をゆっくり下ろす
- 吐く息のタイミングで、お尻をかかとにつけて、子どものポーズでお休みする
ポイント
※呼吸が乱れやすいので、呼吸がしづらい人は胸式呼吸でポーズをとる
※両手で両足をつかむときは、肩を外側から回すと肩甲骨が寄せやすくなる
※背筋の力も使って上体を起こす
※足のつま先が外側を向かないように気をつける
※首が詰まりやすいので、肩がすくまなように気をつける
※ポーズのキープ中は、吸う息で上体と脚を持ち上げ、吐く息でポーズを保つようにする
※背中の背面に空気を取り込むようにして息を吸うと、呼吸がしやすくなる
※ポーズがきついときは、丸めたブランケットを下腹部に置くとポーズがとりやすくなる
ラクダのポーズは膝立ちで骨盤を安定させ、胸を開きながら上体を反らせるポーズです。深い後屈の仕上げとしておこないましょう。腰を無理に反らさず、背中は頭の方向に伸ばす意識で。胸を上に引き上げてポーズをとりましょう。

- ひざ立ちになり、両足を骨盤よりすこし狭い幅(坐骨幅)か骨盤と同じ幅に開く
足先は、つま先立ちか足の甲を床につける (足の甲がつくと難易度が上がります)
太ももと下腹を引き締める - 両手を腰におき、息を吐きながらお腹と太ももの付け根を突き出す。
- 息を吸いながら、両腕を外側に回しながら肩甲骨を寄せ、胸を開く
両手は足首をつかむか、両手をかかとにおく - 息を吸うタイミングで、胸とお腹を引き上げる
目線は上、首は長く保つ
- 息を吸うタイミングで、背骨を1本1本積み上げるイメージで上体を起こし
ひざ立ちになる(腹筋も使って起こす) - ひざ立ちのまま、1,2呼吸をして、血のめぐりを落ち着かせる
- 息を吐きながらお尻をゆっくりかかとにつけて、座る
(正座ができないときは、お尻のを床につけて割り座になる)
ポイント
※下腹部を強くして腰を反らしすぎないようにする
※吸う息に合わせて、胸をひらき両手で両足首をつかむ
※首は脱力せずに伸ばしきった状態でキープする (頭が下を向きすぎないようにする)
※ポーズをキープしている間は、胸の上部に呼吸を送るように意識する
※ポーズが不安定なうちは、無理に呼吸を合わせずに体の安定を優先させる
ラクダのポーズは後屈が強いポーズです。手が足首、かかとに届かないときは、②のように腰をあてた状態で胸を開きましょう。腰を使ってポーズを完成させないように気をつけてくださいね。
また、ラクダのポーズは血流が頭に集まってくるので、頭が肩や胸より下にくると気分が悪くなる人は、②のままでポーズをキープしましょう。

後屈の練習では、注意しておきたいポイントがいくつかあります。体を安全に守りながら練習を続けるために、よくある疑問や注意点をまとめました。練習をする前に一度確認しておきましょう。
後屈をする前に準備運動はしておきましょう。
体が冷えている状態でいきなりおこなうと、腰や背中に負担がかかります。まずは、太陽礼拝で体全体を温めて、キャットアンドカウやタウンドックなど。体側や背中まわりのこわばりをほぐしましょう。背中全体が柔らかくなると反りやすくなります。
さらに、肩甲骨まわりを軽く回す運動や、股関節・太もものストレッチも加えておくとポーズがしやすくなります。

痛みが出たら、その場で中止しましょう。
痛みは体が防御反応を出しているサインです。腰に鋭い痛みや違和感がでたら、無理に続けず一度休むことが大切です。痛みが続く場合や強い違和感が残る場合は、必ず医療機関に相談してください。
再開をするときは、橋のポーズなど軽めの後屈から始めて、体の様子を確認しましょう。
以下に当てはまる方は、後屈ポーズを控えるほうがよいとされています。医師やインストラクターに相談し、無理をせず軽く体を反らす程度にとどめておきましょう。
- 腰痛や椎間板ヘルニア、脊椎分離症・すべり症など、背中に疾患がある
(背中を強く引き伸ばすため) - 妊娠中、産後間もないかた(骨盤を前に出す動きで子宮に圧がかかるため)
- 高血圧・狭心症など循環器疾患、緑内障など目の疾患がある(強い腹圧をかけられないため)
- 胃潰瘍や消化器系の不調がある(腹圧による内臓の圧迫があるため)
毎日する必要はありません。ご自分のペースですすめましょう。筋肉は使ったあとに休ませることも大切です。無理せずに、前回より少し動けたくらいのペースが理想です。
後屈のあとには、クールダウンを入れて、背中や腰の緊張を残さないようにしましょう。子供のポーズで背中を緩めて、ダウンドックなどで背中を伸ばすのがおすすめです。
深い前屈のポーズやねじりのポーズは、脊柱に負担をかけやすいため、時間をおいてから練習してください。

ブリッジ(ウールドヴァ ダヌラーサナ)は、上級者向けの後屈ポーズです。安全に練習するには、以下の条件が満たせるか確認しましょう。
- ラクダのポーズで手が足裏にぴったり触れるほど、後屈が深まっている
- 腰に負担をかけていない後屈ができている
- プランクポーズとチャトランガダンダーサナが繰り返しできる腕力がある
- 手首を反して、腕が耳より後ろにすることができるか
- 手首を90度くらい後ろに反らすことができるか

後屈は、胸を開き、腹筋と背筋で上体を支えるという複合的な動きをあわせたものです。これを正しくおこなうと、体に次のような変化をもたらします。

胸を開く動きをおこなうと、姿勢に関わる骨格が理想な位置へ近づきます。具体的には、
・胸骨(胸の中心の骨)が持ち上がり、胸椎(背骨の胸あたり)が適切に反る
・肩甲骨が中央に寄せられ、肩が自然と後ろに引かれることで、肩の前側の筋肉が伸びる
この胸を開く動きによって、丸まりがちな背中が自然に引き上がり、背骨本来のS字カーブに近づきます。そして、前に巻き込まれていた肩が正しい位置へ戻るようになります。巻き肩が緩和されると、首や肩の筋肉の緊張も段々とほぐれてきます。**
後屈をすると、胸まわりの筋肉が大きく伸び、呼吸に関わる肋間筋や胸部・腹部の筋肉に働きます。
また、背中を支える脊柱起立筋、肩や首まわりの筋肉(僧帽筋・半棘筋、胸鎖乳突筋など)も同時に働きかけ、安定させながら背面全体をサポート。その結果、肺や横隔膜が動きやすくなり、呼吸が深まりやすくなります。**
呼吸が深まると自律神経も整いやすくなり代謝も安定します。疲れにくさや体の軽さも感じるかもしれません。
ヨガでは「胸を開く動きは、心を開く動き」と言われています。胸が縮こまっていると呼吸も浅く、体もこわばりがちです。反対に、胸が広がって呼吸が深まると、気分もすこしずつ軽く感じられるようになります。
これは、呼吸の安定によって自律神経のバランスが整うことが影響していると考えられます。後屈は体だけでなく、心の安定感にもつながります。
後屈は「腰を反らす動き」ではなく、「胸を開く」「背中を伸ばす」「腹圧で支える」ことがポイントです。腰の負担を減らし、安全に練習を続けるために、次のポイントを意識しましょう。
- 胸を開く意識をもつ
- 肩甲骨を寄せ、肩を後ろに引く
- 背中を上に引き上げ、長く伸ばす(反らしすぎ防止)
- 腹圧をかけて腰を守る
- 反り腰ぎみの人は、みぞおちが出すぎないようにする
- 段階的に練習を進める
- ウォームアップは必須。体が温まってから練習する
- 痛みが出たら無理せず中止し、違和感が続く場合は専門機関に相談
- 後屈をしたあとはチャイルドポーズ・ダウンドッグで背中をリセット
- 深い前屈や強いねじりはクールダウン後に時間を空けておこなう
後屈は正しい順番で体を慣らしていけば、体の変化も実感しやすくなるポーズです。焦らず、少しずつ練習を積み重ねていきましょう。
<参考文献>
InformedHealth.org [Internet]. “The structure and function of the spine”
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK338355/
(※脊柱の構造および、体幹の安定(腹圧)による腰部保護の仕組みに関する根拠として参照)

